アーティストに取ってスケッチブックというのはとても重要だと思います。
それはアーティストにとっての第二の脳であり、実験場兼その記録となるからです。
この数年、スランプに向き合っている訳ですが、僕はいきなりキャンバスに向かうという行為そのものが間違っているのだということに気が付きました。
それでは、コンパスも地図も持たないままに大海原に船出しているようなものなんだと。
スケッチブックさえあれば、メンタル的にも、作品としても段階段階を踏みながら壁を乗り越えていけるので、必須のツールだと言えます。
私の通った芸術大学では、かなりスケッチブックをつくることにこだわったクラスなどがありましたが、今になって腑に落ちました。
ルネサンスの巨匠を見れば分かりますが、ミケランジェロが良い例だと思います。

こちらのスケッチ(エスキースかもしれない)があってこその、この壁画がありますものね。
今では写真を使う人が多いと思いますが、ドローイングを間に挟むだけで全く違った、活き活きとした作品が出来上がります。
これだけは断言できますし、写真から直に描いた絵はすぐに分かります。
面白みがなく、動きが全くなくて止まってます。

スケッチブックそのものには、2つの使い方があると思います。
これらを一冊にしても良いとは思いますし私は以前そうしていました。
が、脳と紙への向き合い方が異なるので、やはり分けることをお勧めします。
が、脳と紙への向き合い方が異なるので、やはり分けることをお勧めします。用途はさっそく説明いたします。
1つ目は、作品として残すためのスケッチブック
- あまり外には持ち出さないやつ
- 完成するとそのまま作品集になる
仮にこれをスケッチブックAと呼びます。
これには、そこそこ良いクオリティの用紙が要求されます。厚手で、消しゴムを使うことができる。絵具などを使ってもぐちゃぐちゃにならない、ある程度耐水性のあるものが望ましいですね。
日本だとマルマンあたりが売り出しているのが一番流通していると思います。
あまり外には出さないやつとは書きましたが、例外的に、僕の友人の画家Mは、胸ポケットに欠かさず小さな厚めの用紙のモレスキンを忍ばせており、暇さえあれば何か描いていました。
(とはいえ、アトリエや自宅でくつろいでる時のみ使ってたかなあ。やっぱり持ち出す必要ないね)
そして良い作品が出来れば、それを実際に大きなキャンバスに油で作り直していました。
彼はこのスタイルをいつも貫いていたからか、描くものに困ったことは無いという感じで常に何か作っていたように思います。
このスケッチブックのサイズは、人それぞれの好みだと思います。友人Mは本当に息をするように絵を描くような人だったので、ポケットサイズが向いていました。
私は、ベッドに寝そべったりソファでくつろぎながら大型の絵のためにスケッチブックにドラフト作品を残す、という感覚でしたので、手に浮かせて描ける、テーブルに置くほど大きくないA5より少し小さいものが適していました。
いずれにせよ大事だと思うのは、簡単にちぎれてバラバラになってしまうような製品は避けるということ。
さらには、完全に広げることができること。これが私のスケッチブックAの条件です。
結局この条件を満たすものとなると、モレスキンはかなり優秀だと思います。
クオリティの高い製品ですから、一冊仕上がった際の気持ちの高ぶりもひとしおです。
もう1つの使い方というのは、
ブレーンとしてのスケッチブック
求められる要素は、
- 安い(高いと躊躇するから)
- 割とどこでも手に入る
簡単に言うと、なんでも書き込める自由帳です。
こちらをスケッチブックBとします。ブレインのBです。
これは、ブレインストーミングをするための触媒だと思ってくれれば良いと思います。
紙のクオリティは、どうでも良いです。
それよりも量があって、携帯性が良く、かといって書きなぐりに適したサイズは保持していると望ましいですね。そう考えて行くと僕の理想のサイズは、A5になります。
さらにいうと、どこでも買えて、安くてどんなにくだらないことを書いても気にならないようなスケッチブックがふさわしいと考えます。
すべてはメンタルブロックをとにかく外したいからです。
スケッチブックBの役割というのは、私たちが普段意識の表層にふっと現れた一瞬のひらめきを、限りなくリアルに、スピーディーに記録すること。
そしてブレインストーミングをして自分の知らない領域に存在するアイデアを捕まえに行くことだからです。
ですから、学校でのノートを写す時のように後から見やすくて綺麗なものである必要は全く無いからです。
そう考えますと、以前はモレスキンが好きで常に携帯していたのですが、一冊の値段が割とすることから、あまり気軽に書き込むということが僕の貧乏根性からはとてもしづらかったように感じました。
その後はメモ用紙にひたすら書き殴っていましたが、どれもバラバラでどこかにいってしまうこと、そのため体系立ててアイデアを具現化することができないことから、メモやルーズリーフ用紙はやめました。
代わりに使い始めたのが、よくあるキャンパスノートのA5サイズです。
これは安いですし、サイズ感もちょうどよく、また書きなぐりに適した紙質をしています。
このようにしてブレーンとしてのスケッチブックを2冊用意することで、作品作りがさらに捗るのでは無いかなと思います。
Evernoteのような電子ノートも使っているはいるのですが、やはり手を動かして残したものと携帯で書いたものは、情報の質と来るところが異なるように感じました。