迷い猫を保護した話

エッセイ

今度こそ迷い猫の捕獲

僕はこの2年あまり、ずっとリモートワークなのでずっとマンションのベランダを向いて仕事をしている。

この地域には野良猫が多く、これまでに沢山の猫たちが来るようになっては消えていった。以前の記事にも書いたチャトラッシュは、いつの間にか顔を見せなくなってしまった。雄猫同士の縄張り争いに負けて他に流れていったのでは、というのが妻の見解だ。考えたくはないが、冬を越せなかった可能性もある。初めて姿を表した時は元気で綺麗な毛並みだったのに、最後の頃は毛は汚くなり口周りはただれてウェットフードしか口にできなくなっていた。

1ヶ月ほど前から、キジトラがよく顔を見せるようになった。マルオと名付けた。体はでかい。赤い首輪をしている。よく木陰で日向ぼっこをしており、お腹がすいてはご飯をねだって僕に向かって鳴いてくる。

マルオはどこかの飼い猫だと思っていたが、いつの間にか首輪がなくなり(最近は首が締まらないように外れる仕組みの首輪がある)、毛並みが段々と汚れてきたことからもどこかからメスの尻を追いかけてここまで流れてきてしまい、戻れなくなったと見えた。

チャトラッシュのこともあったし、できるだけ早く捕獲して飼い主を探すことに決めた。

チャトラッシュとの思い出の記事

作戦は、少しずつ餌付けして仲良くなり、ちゅーるをつかって家の中に誘い込む。隙を見て窓を閉める。といういたってシンプルなものだが、心を開いてもらうまで辛抱強く接する必要があり、時間がかかった。

辛抱強く毎日餌付け。。

先週家の中に餌を食べに入ってくるようになったため、次のタイミングで閉めようと決めた。

そして一昨日、ついに保護することに成功した。妻はこういうのがうまい。

まずは先住猫のたまと侘助に病気をうつされないよう、獣医に連れて行き病気がないかどうか確かめる。問題はなさそうだった。

マイクロチップはなし。去勢もされていない。

ノミの薬を打ってもらい、家に連れて帰った。ちなみに診察料は1万円。

いかにこの国では捨て猫を保護するのが難しいかがわかる

マイクロチップを打つべきか否か

6月から、犬猫へのマイクロチップ装着義務かが始まる。

Yahoo!ニュース
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たまに何も知らず俺は倫理的にマイクロチップを打つやつは飼い主としての資格がないとか、生物としてそうやって管理するのはおかしいと言う人がいるが、果たしてそうなのだろうか。義務というのはやりすぎのような気もするが、なかった場合を考えた際の地獄を思えば僕には必要なことのように思える。

ひなたぼっこするマルオ

確かに、自然の中でひなたぼっこをするマルオはとても幸せそうだった。

だけどこの幸せだって、秋まで持てばいいものだ。常に縄張り争いの中にいる野良猫の世界にあっては、栄養のある食事を定期的に摂取することは難しい。常に他の猫との見えない争いの中にあってストレスは耐えない。喧嘩をして傷がつけば、すぐにばい菌が入って腐ったり、不治の病に感染することも多々あることだ。

また今回のようにこうして家に帰れなくなってしまえば、またどこかで交配しては可哀想な子猫たちが生まれ、殺処分されるか数年の命である野良猫がねずみ算的に増えて行く。

飢えた母猫は自分の子を食い殺すこともある。人間界で生きるには猫の社会は残酷すぎる。

これ以上野良猫を増やしてはならない。

自然のままに生きたとて、10倍は長く生きられるのとどちらがいいかは、考えるまでもないと僕は思う。

猫は野生では生きられない。それは人間が有史以来そのようにエンジニアしてきた生物であるということも一員としていると思うし、その分大事に責任を持って幸せにしてあげる義務があると思う。

保護猫と過ごす夜

家に連れ帰るとアトリエにしている部屋を荒らされてもいいように片付け、そこを寝床にさせた。

怯えていてなかなか水も飲まなかったし、夜は遠吠えをしていて可哀想だった。

次の日、たくさん撫でてやると安心したのかお腹を見せてゴロゴロ言い出し、水もご飯も食べた。

ちゃんとトイレで、健康なうんちもした。やはり飼い猫だっただけはある。

先住猫のたまたちとも顔合わせをしたが、おとなしいやつで喧嘩もしなかった。

安心させてやるために出来るだけ一緒にいてやった。甘えてくるようになり、しっぽをぱたぱたとさせながら体をあさりつけてくるようになった。

可愛いマルオ

僕は家に迎え入れてやりたい気持ちが強い反面、経済的な余裕が気になり、保護猫カフェのねこかつに相談した。

預かってもらう事ができるとのことだ。

一晩考えた。

遠吠えはさらに激しくなり、部屋はとんでもない荒らされ方をしていた。

少し家を散歩させると、ベランダから外に出ようとして暴れ回る。

外の気持ちよさを知っている以上、外に出せないまま飼うのは難しそうに思えた。

あくる日さらに遠吠えは続き、夫婦共々寝不足になった。

いよいよねこかつに連絡して預けてもらうことに決めた。

とても寂しくなった。

並行して警察や地元の保護団体、保健所に連絡をして届出がないかを確認した。なかった。

ツイッターで記事を書き、拡散をお願いしたが未だに有力な手がかりもない。

ねこかつに連れてこられた保護猫は、まずシェルターに入れられるとのこと。

そして人前に出せるようになるとカフェにてデビューするらしい。

マルオは人懐っこいからすぐにデビューできるだろうとのことだったが、また怖い思いをしなくてはならないのかと思うと、心がとても痛む。

今頃シェルターでおびえながら鳴いているのだろうか。

不安な中、僕に心を許して体を預けてきたことを思い出すと、涙が込み上げてくる。

緑の中で日向ぼっこをするマルオの自由を僕は奪ってしまったのだということ、そして信じてくれたマルオを結果的に裏切ってしまったことにたいしての罪悪感と、これできっと長生きすることに繋がるんだという思い、頼りきっていて可愛いマルオを思い、ねこかつを出てからずっとモヤモヤとしている。

生き物との出会いと別れはいつも唐突にやってくる。そしてこの想いはいつか忘れていってしまうのだろう。しかしマルオは僕に新たな人との繋がりを与えてくれた。猫の幸せを願う隣人とより仲良くなれたし、ねこかつのスタッフともさらに関係を深める事ができた。

素敵な家庭に引き取ってもらい、マルオには幸せになってもらえたらと思う。

保護猫カフェねこかつについて

うちで飼っている白猫のたまと、黒猫の侘助は保護猫カフェねこかつから譲渡してもらった。

ねこかつについてはまた別の記事で、どれだけ素晴らしい活動をしているのかまとめたいと思っているが、とにかく代表の梅田さんの、自分の身を捧げても不幸な猫たちを救いたいという純粋な気持ちがすごい。

情熱大陸などでも取材を受けたそうだ。

野良猫、捨て猫...行き場を失った猫に新しい家族を見つける"保護猫カフェ"店主の覚悟 | 情熱大陸を読む | MBSコラム
小江戸と呼ばれる埼玉県川越に、ちょっと変わった猫カフェがある。野良猫、捨て猫たちを保護し、しつけをして人間に慣らし“新たな家族を見つける場”として注目されているのが、保護猫カフェ「ねこかつ」だ。店主は、梅田達也46歳。殺処分される瀬戸際にいる猫たちを引き取り、猫カフェや譲渡会で飼い主探しを行なっており、これまで1000...

前述した通り、今回検査しただけでも結構な金額がかかった。

ねこかつは、営業利益のほとんどが治療費や検査費用に使われているらしい。

全くどうやって生活しているのかわからないくらいだ。

僕はもともと獣医になりたくて何年も浪人し、うまくいかなかった過去がある。

動物を救いたいという気持ちはあっても頭が悪いとダメなのだと決めつけていた。しかし、医者じゃなくとも生き物を救う活動というのはいくらでもあるのだと思い知らされた。

今後も僕はねこかつを応援し、自分の出来る範囲で動植物が豊かに生きられる世界を作れるような活動をしていきたいと思う。

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