【読書感想】13歳からのアート思考

読書記録

最近では、ビジネスの現場でアート思考が求められたりしており、そう言った人たちをターゲットにしている本だと思い嫌厭していたのですが(半分当たりで、半分は本当に13歳向けなんだろうなという印象)、思っていたよりもいい本でした。現代アートを学んできた自分にしてみてば、とても読みやすくうまくまとまっている現代アート入門書・まとめの本で、実生活や自分のアートを考え直す良いきっかけになりました。

アーティストとは?

まず、アーティストとはなんなのか?という前提について、アートを植物と例えて話を進めている点が想像しやすくて良いです。

ほとんどの人たちは花の部分(表現の花、作品)をアートだと思っているところがあると言いますが、それはアートという植物の本の一部の部分だけでありもっと重要なのは種(好奇心)、根っこ(探究)の部分だと言います。ましてや、本当に素晴らしいアートは根っこが深く、広く伸びているのだと。

どんなに精巧で立派な作品を作ったところで、花ばかりを美しくても根っこがちゃんと張っていないとすぐに萎れてしまう、アートは言えないとまで言い切ってしまいます。こうした作品ばかりをせっせと美しく作り出しても、探求がおろそかな人たちのことを花職人と筆者は呼んでいます。花職人は興味のタネから探求の根を伸ばす過程をないがしろにして、タネや根のない花だけを作る人たちだと。一方アーティストはむしろ探究心を頼りにゴールも意識せず、根を伸ばすことにより熱中しており、花が美しいか、精巧であるか、斬新であるかは重要ではないのだとも言っています。究極、アーティストとは絵を描いたりものを作ったりしているとは限らないのだということです。

探求の根を伸ばすということ

話を進めていく中で、筆者は6つの現代アート作品を紹介し、どのようにそのアーティストたちは探求の根を張り、花を開かせたのかを説明していきます。例えば目で見た世界をそのままに表現するのが当たり前だった絵画に、内面の世界を投影させたマティス。彼はいまでは色彩の魔術師と呼ばれており、「色」について探求した第一人者ですよね。

こうして読み通して見ると、自分にとっての好奇心、探究はなんなのだろうと考えてしまいます。最近は身の回りの生物について考えることが多く、スーパーで買ってきた食材を油絵でせっせと描いていますが、向かっているゴールは良くわかりません。僕はもしかすると、花をいかにして美しく咲かせるかばかりに気を取られており肝心の根を張るという行為がおろそかになっていたような気がします。

自分が何に興味があるのか、なんとなくはわかるような気がしているのですが明確でないのも確かで、こうしてもっと文章を書いて自分との対話をしていきたいと考えるようになりました。

花職人として生きるか、アーティストとして生きるのか

世の中ではよく「思考停止」というワードを使われるようになりました。筆者のいう花職人は、確かに優れた課題解決をしているが、価値創造はできていないと言います。それは自分自身の考えをもとに想像を膨らませたり、思考を推し進める過程がないがしろになっているからではないでしょうか。Chat-GPTの登場により、近年はますます自分の頭で考える必要性がなくなりました。すると世の中はどうなっていくのでしょうか。新たなイノベーションは生まれてくるのか?右に倣えで周りに合わせて生きることが正となってしまうのか?この世界には正解はなく、自分を信じて突き進むことがより求められるのだろうと思いました。

こう言ったことを考えると、やはりアートとはなくてはならない存在なのだなと痛感し、もっと世の中に作品を出していかなければならないなと思いました。3日ほどで読める内容であっという間でした。面白かったです。アートに少しでも興味のある方にはオススメです。

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